量子ビームを用いた先端計測
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中性子反射率法
中性子はナノメートルスケールの波長を有する波として振る舞い、物質の界面で光と同じように反射・屈折を起こします。中性子反射率法は試料表面で反射される中性子がその表面で干渉する様子を調べることによって、深さ方向に対して数ナノメートル~数百ナノメートル程度のスケールで膜の厚さ・界面の粗さ・密度の分布などを測定することができます。
また、中性子は以下のような特長を有しており、これを利用することによって高分子複合材料中の組成分布、溶媒接触における構造変化のその場観察、磁性薄膜中の磁気構造などを観測することが可能です。
基板表面に作成した試料に対し、中性子を基板側から照射し、その表面構造を観測することが可能。
軽元素を多く含む高分子やリチウムイオン電池の電極、内部に磁気構造を有する磁性薄膜などの試料に最適。
同じ元素の異なる同位体(例えば重水素と軽水素)で散乱振幅密度(屈折率に対応)が異なるため、試料の注目したい箇所だけ同位体置換(重水素化)することによりラベリングできる。
このようにして得られるナノスケールの構造情報は、ナノ構造の形成メカニズム解明につながります。また、これを燃料電池やリチウムイオン電池、有機EL、ハードディスクのヘッドといった機能性材料に応用することにより、その機能性向上を目指す研究も行われています。
本プロジェクトで使用する中性子反射率計SOFIAは、世界最高レベルの性能を有する試料水平型の中性子反射率計で、以下のような特長があります。
本プロジェクトでは、このSOFIAをさらにアップグレードし、トライボロジー研究へと応用します。その際に鍵となるデバイスが集光ミラーです。 SOFIAでは一般的な反射率計と同様に光学系に2組のスリットを用いていますが、我々は高精度の集光ミラーを開発し、1cm角程度の小さな試料に対してビームを照射できるようにします。通常、試料のサイズが小さくなるとそれに伴ってビームの強度が劇的に減少するため、微小試料を用いた測定は難しいのですが、集光ミラーを用いるとビーム強度のロスを軽減することができるようになります。
トライボロジー研究では固体同士の接触面を直接観察することが要求されますが、そのためにはナノスケールで試料を平行に保つことが要求されます。これを実現するためには試料サイズを小さくすることが重要なのですが、前述の通り強度が減少するという問題があり、測定効率が大幅に減少します。本プロジェクトで取り組む集光ミラーを用いた中性子反射率測定は世界でも前例のない試みで、これによって摩擦面の直接観察によるトライボロジー研究を推進していきます。