京都大学
中性子は原子や分子の構造と運動を関連づけて観察するのに適した波長とエネルギーを持っている希有なプローブです。中性子を利用した物性測定には様々な手法がありますが、TRIMNで推進する中性子スピンエコー法を用いることにより、空間スケールで0.1〜100nmの空間領域をピコ秒~サブマイクロ秒の構造とダイナミクスを測定することができます。この手法の鍵となるのは中性子が持つ「スピン自由度」で、このスピンが回転する位相が試料で変化する様子を調べることによって、高いエネルギー分解能を同時に実現することができます。しかし、高分解能達成するにはわずかなスピンの位相を見逃さないための位相補正デバイスとなる「集光ミラー」の開発が必要不可欠です。
京都大学の研究グループはこれまで大強度陽子加速器施設J-PARCで共鳴中性子スピンエコー法を実現するための研究開発を行ってきました。今回のプロジェクトでは、さらなる高分解能化を目指して2次元回転楕円集光ミラーの開発と、それによる位相補正法の確立を推進します。また、この中性子を集光するための技術は中性子反射率法にも有用であり、そのために100マイクロメートルまでビームを絞ることができる1次元楕円ミラーの開発も行っていきます。
メンバー
杉山 正明 |
原子炉実験所 教授 専門:生物物理 役割:NSE開発と利用 |
日野 正裕 |
原子炉実験所 准教授 専門:基礎物理、中性子光学 役割:NSE開発 |